恒久対策活動
私達原告団・弁護団の活動は、訴訟により個々の患者さんが一時的に金銭的救済を受けることを目的とするだけではありません。
現在の医療水準では、B型肝炎ウイルスを体内から完全に除去し、完治したと言える状態にすることは難しいと言われています。そのため、B型肝炎ウイルスに持続感染した患者さんは生涯、体内のB型肝炎ウイルスの状況を検査しつづけるべきと考えられています。
とすれば、一時的に金銭的救済を受けるだけでは、B型肝炎患者の方々を救済したとは言えません。
私達原告団・弁護団は、訴訟による救済を受けられないB型肝炎患者の方々も含めた全てのB型肝炎患者の方々がより快適に暮らせる社会の実現を目指しています。
具体的には、
- 治療法、治療薬の開発の促進
- 安心して適切な治療を受けられる体制の保障
- 医療費助成の維持・拡充
- 生活支援(身体障害者認定、治療と就労の両立、その他生活扶助的政策)
等を求める活動をしています。このような活動を私達は、恒久対策活動と呼んでいます。
活動の例を挙げると、
(1)肝炎対策推進協議会
全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団から肝炎対策推進協議会の委員が選ばれています。委員を通じ、より充実した肝炎対策を国に求めています。肝炎対策推進協議会の活動内容については、厚生労働省のホームページをご参照ください。
(2)厚生労働大臣との協議
毎年、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団は厚生労働大臣と肝炎対策等について協議を行っています。この協議で、より充実した肝炎対策を国に求めています。また、その協議に向け、厚生労働省の肝炎対策等の担当者と連携し率直に意見交換を行っています。
この恒久対策活動を進めていくには、多くの方々の理解と協力が必要となります。そこで、私達は、日本肝臓病患者団体協議会、薬害肝炎全国原告団弁護団といった他の肝臓病患者団体と協力し、多くの国会議員の先生方、地方議会議員の先生方の理解を得て様々な肝炎対策を実現してきました。医療費助成制度の実現、身体障害者認定基準の緩和、重度肝硬変・肝がん患者への医療費助成等、多くの成果を得ることができました。もっとも、まだまだ多くの課題が残されていますので、今後も、この活動を前に進めていきます。
原告の方々にも、原告ではない方々にも、協力ができる範囲で構いませんので、協力をお願いしていますので、ご理解とご協力をお願いします。
署名活動について (恒久対策活動)
名古屋原告団・弁護団では、毎年春頃、日本肝臓病団体協議会等の他団体と共同で、国に対してすべてのウイルス性肝硬変・肝がん患者の療養支援とウイルス検診の推進を求める署名活動を実施しています。温かいご支援をお願いいたします。
真相究明活動
検討会議における提言
平成23年6月28日、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と国の間で「基本合意書」が締結されました。
基本合意書においては、国は、感染被害者及びその遺族の方々に給付金を支払うとともに、集団予防接種によるB型肝炎感染拡大の検証を行い、再発防止等の検証を行うことを約束し、「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」(以下「検討会」といいます)が設置され、平成25年6月18日、「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」(以下「検討会議」といいます)の審議が終了し、再発防止のための提言がまとめられました。
検証会議では、文献調査、アンケート調査、ヒアリング調査等が実施され、これらの調査に基づいて議論が行われました。これらの調査によって、WHOの勧告前の昭和20年代から、わが国では注射器の不十分な消毒によって肝炎ウイルスが感染する可能性があると指摘されていたこと、イギリスやドイツなどでは戦後まもなく感染防止のため注射器の滅菌に関するガイドラインが存在していたことが改めて明らかになりました。ところが、わが国では注射器の交換の指示はなされていたものの、昭和40年代半ばまで針の連続使用の割合が30%を超え、「煩に堪えない」との認識から注射筒の取り換えは行われなかったのです。そして、肝炎の研究が相当進んでいた昭和60年に、当時の厚生省から、「B型肝炎ウイルスは感染力の弱いウイルスである」との誤った情報が発信されるなど、厚生省・厚労省の対応が杜撰であったことも明らかとなりました。さらには、自治体や医療従事者の対応も不十分で、「集団予防接種の際の注射針・注射筒の交換について適切な時期に適切な方法で指導・周知を行っていれば、回避可能な問題であったこと」が再確認されました。
また、再発防止に向けて、提言では、「国は、国民の生命と健康を守ること、そしてそれを通して個人の尊厳と人権を守ることを最大の使命として、厚生労働行政に全力を尽くすべきである。」とされ、先進知見の収集と対応、事例把握と分析・評価、現場への周知・指導の徹底など体制の充実が求められています。そして、予防原則の徹底が不十分であったこと、国の体制と体質に問題があったことが指摘され、「省としてこれまでの組織・体制の問題点を洗い出し、十分な改善策を講じること」が求められています。さらに、提言は、再発防止を全うするために組織のあり方の議論を続ける場を設ける必要があるとも指摘しており、厚労省は、提言の趣旨に従い、速やかにしかるべき対応をとる必要があります。
私達は、提言が指摘した問題点を解決し、再発防止を図るためには、政策推進部門と独立した第三者機関を設置し、その第三者機関において、予防接種行政にとどまらず厚生行政全般について、先進知見や事例の収集・分析を行うとともに、国民の生命健康に危害が生じた事件及びそのおそれのある事件について、原因究明のための調査、被害救済及び再発防止策を検討することが不可欠であると考えています。
そして、提言を受けての厚労省の取組みを今後も監視していくとともに、再発防止のため第三者機関の設置を強く求めて参ります。
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安全・安心な歯科医療を目指して
平成26年5月、約70%の歯科でハンドピース(ドリルの柄)が患者ごとに交換(滅菌)されていないことが報道されました。これ以上B型肝炎感染拡大と同様に医療器具の連続使用で新たな感染被害が生じることは許されないことです。
そこで、原告団・弁護団としては、平成28年に、歯科の医療現場における実態調査を求めましたが、平成29年に公表された結果でも、ハンドピースを患者ごとに交換している割合は52%にとどまり、その100%実施を強く求めました。
そして、平成30年度から、医療器具の患者ごとの交換(滅菌)は、基本診療料の要件とされ、原則としてすべての保険診療歯科において、標準予防策(患者が感染者であるか否かを問わず一律に実施する感染予防策)が実施されるべきことになりました。
原告団・弁護団としては今後も、現場での実施状況を見守る活動を行っていきます。
TEL : 052-961-0788 FAX : 052-253-6869 受付時間/平日 9:30~16:30
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患者講義
原告団と弁護団では、看護学校、大学等で患者講義を行っています。
患者講義では、B型肝炎の治療で大変なこと、職場等で受けた差別や偏見に関する体験談をお話ししています。同時に、弁護団からは、日本で集団予防接種によりB型肝炎が広がった歴史的経緯、B型肝炎に関する正しい知識等について話をしています。
患者講義では、B型肝炎に関する正しい知識を身につけてもらうことを念頭に置き、社会からいわれのない差別や偏見が無くなるよう、分かりやすい講義をすべく努力しています。
患者講義をご希望の教育機関の方は、弁護団事務局(052-961-0788)まで、ご連絡ください。
過去の講義実施実績
日本福祉大学、鈴鹿医療科学大学、医療法人社団春和会もくれんクリニック、えきさい看護専門学校、中京病院附属看護専門学校、名古屋医療センター附属看護助産学校(当時)、名古屋学芸大学、名鉄看護専門学校、公立春日井小牧看護専門学校、西知多看護専門学校、桑名医師会立桑名看護専門学校、JA愛知厚生連 更生看護専門学校等、サンビレッジ国際医療福祉専門学校、羽島市医師会准看護学校
医療講演会、原告交流会等
名古屋原告団・弁護団では、多くの方にB型肝炎訴訟について広く理解をいただくために、肝臓専門医を招いて最新治療を学ぶ医療講演会や、患者どうしの交流会を各地で開催しています。「肝炎の理解が進んだ」、「不安は自分だけでないとわかり、率直に話せて良かった」などと好評です。